04・実際

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 奥村が頼んだワッフルは直径二十センチほどの丸いもので、十文字にカットされていた。厚みもあるので、これを一つ食べただけでお腹いっぱいになりそうだ。  生クリームのようなものと蜂蜜が、白いプディング型の容器にいれられて隣に置かれていく。ウェイトレスが気を利かせてか、二人分のナイフとフォークに取皿も持ってきた。ウェイトレスの笑顔のように清楚な白い取皿だった。ぴかぴかに光っている取皿。  ミルクティー色のワッフルは、ふんわり見えて美味しそうだった。甘だるい匂いまでもがふわふわ漂って鼻までやってくる。ワッフルというより、パンケーキみたいだ。  奥村がナイフとフォークを手に取っている。カットされた四つのうち、一つを取皿に移していく。クリームを少しナイフですくってそのまま、パンケーキのようなワッフルに塗りつけた。  ナイフとフォークで大きくカットして、そのまま口へ。 「うまい!」  表面がサクサクしてうまいわほんと。  奥村が口をもぐもぐさせながら言う。本当に美味しそうに。  目が合うと「食う?」と尋ねられた。 「いらない」 「うん。食いたいって言ってもやらないもの」 「……」  だったら聞くな。  奥村はなおも口を動かす。ワッフルをだんだんと小さくしていく。目の前で、カチャカチャ音をたてるナイフとフォーク。  ワッフルが残り四分の一になったところで話しかけてみた。 「ねえ」 「なんだよ。いくら頼まれてもやんないよ」  だからいらないって。と苦笑する。 「あのさ、あんた見合いの相手があたしだって分かってたんでしょ? ここに来る前に、とっくに」 「うん、分かってた」  奥村は口も手も休めない。皿の上でカットしては、ワッフルを口の中。  何で見合いする気になったの? と聞くと、仕方なかったから。と返ってきた。
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