04・実際

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 だけど奥村は本当に変わったと思う。 「何度もしつこいけどさ。今の今までホント、あんただって分かんなかったわ。なんか懐かしい感じはあったんだけど。でもまっさかあんただったとは」 「ああっ? ひっでえなあ。ていうか俺も今更だけど聞いていい? 何であなたここ来るのに俺のこと知らなかったんですか? 名前とか写真とかでさあ、ちょっとはアレって思うでしょ普通」 「だってあたし、写真ほとんど見なかったし」 「は?」 「や、だって別に来たくなかったから。見合い。意地になって見なかったんだもん」  あらあ。と奥村がオバチャンみたいな声をあげる。 「でも俺の名前ば聞いて懐かしいものはあったでしょう?」 「や、名前……名前は。あんたの名字しかちゃんと聞いてなくて。フルネーム教えられた時も、あー平凡、ぐらいにしか思わなくて」 「なに平凡っ? 俺の名前が平凡ならあなただって平凡だ」 「ああまあ……そうなんだけど、ごめん。小学校ん時の子の名前なんてだいぶ忘れちゃってるし、いま思い出せたのだって、あんたが昔うるっさくて、猿みたいで目立ってたからさあ」 「猿っ? なに言っちゃってんのよあなた。このジェントルマンに向かって」 「は?」  ジェントルマン? 「いやもうまったく、ひどい人だよねえ小笠原さんは」  奥村が大げさに溜息をつく。 「俺ははじめっから知ってたから、あなたがここ来てから必死だったんですよ? 笑いばこらえるの」  すでにワッフルはなくなっていた。変わらずにぴかぴか光っている白い皿に、細かいカスだけが散らばっていた。
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