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外側の、のどやかな光景から目を逸らす。
奥村と向き合った。
「ねえどうする」
「うん?」
「あたしとあんたの事だよ。さっきの奥さんに言わなきゃなんないんでしょうが、これからの事」
「えー、どうするって俺やだよ。やですよ。あなたなんかと付き合って結婚なんて」
「あのね! それはこっちの台詞っ」
「あっ、そうかい?」
奥村が口を大きくあけて笑った。
「話は決まったね。素晴らしく早いわ。ほんじゃ『この話はなかったことで』って俺からオクサンに言っときますのでご心配なく、小笠原陽子さん」
「や、あたしのほうから言っとくから」
「は?」
「だって、あんたに言われたんだったら、あたしが振られたみたいでしょうよ」
「うわ、小笠原さんってプライドたっか~」
まあいいや。お前がそうしたいならそうしてよ。
奥村がククっと笑ったところで、再び外が賑やかになった。
色とりどりの花びらが舞っている。それにまみれた新郎新婦。真っ白なウェディングドレスに、黒いタキシード。しっかりと腕を組んで、くすぐったそうに微笑む二人。
フラワーシャワーと拍手がやまない。光の中のあたたかな光景。
しばらくすると花嫁は、淡い花が束ねられたブーケを空に放り投げた。弧を描いて落下していくブーケ。群がる女性たち。
(ああ、キレイね花嫁さん)
喫茶室でくつろぐ客たちも、チャペルを窓越しに眺めている。
穏やかに時間は過ぎていく。
「いいもんだあ、ねえ」
しみじみ囁く奥村の台詞に、ただこくんとうなずいた。
「……ほんとだよね」
「頑張りましょうなーお互い。早くああなるように」
頑張りましょうな、と言ってくるくらいだ。付き合っている人はいないのだろう。こんな風に見合い話を受けるくらいだから間違いない。
そう確信して尋ねてみた。
「あのさあ。奥村って彼女いない歴どれくらい?」
「うるさいよお前黙ってな」
ふてくされた顔で奥村が腕を組む。
「あなただってねえ。見合いにのこのこ来るくらいだからどうせ寂しい女なんだよ。実際そうなんでしょう? 小笠原くん」
むかついた。
「頼まれて仕方なく、来たんだもん」
言い返したが、確かにその通りだと思って冷めた紅茶を飲んでみる。やっぱり苦い。しばらく舌に渋みが残りそうだ。
カップをソーサーに戻して向かいを覗く。
窓からの陽射しが顔にぶつかって、奥村はまぶしそうに目を細めていた。
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