01・前夜

4/7
前へ
/315ページ
次へ
 見合いの話はいつのまにかマンションのご近所さんに知られていた。多分、母めが吹聴してまわったのだろう。  今日なんて帰宅途中、隣に住むおばさんに出くわしてこう言われてしまった。好奇心いっぱいの笑みを浮かべられながら。 「陽子ちゃん、明日のお見合い、頑張ってね? いい人だっていうじゃない。うまくいくといいわねえ」 「あー、あはは。そうですねえ。頑張りますぅ」  仕事先でもよく使う得意の営業スマイルでにっこり笑ってやったが、内心では悪態をついていた。    ――ババア、面白がってんじゃねえよババア。  
/315ページ

最初のコメントを投稿しよう!

530人が本棚に入れています
本棚に追加