オマケで5分

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 ちく太少年はおこづかいを握り締め、いつもの駄菓子屋にやって来た。  お目当ては、おまけシールつきのウエハースチョコである。 「くださいな」 「はいよ。50万円ね」  50円玉を渡したちく太は家まで待ちきれず、その場で包みを切った。  ワクワクと胸を踊らせながらシールを目にすると、キョトンとせざるを得なかった。  シールに描いていたのは、いつも見ているデフォルメされたキャラクターのイラストではなく、時計の絵に5と書いてあるのみ。 「なにコレ」  思わず出た疑問の声を耳にした店主の老人は、ちく太の手もとを覗き込む。 「おお、そいつは当たりのおまけじゃよ。ついてるのう」 「当たりのおまけ?」  店主の老人は目尻にシワを寄せ大きく頷いた。 「そいつは“スットバシール”といって、体に貼れば5分間だけ自身の時の流れを早めることができる代物じゃ」  ポカンとするちく太。 「一流のスポーツ選手や武道の達人は、集中力を高めることにより相手の動きが止まって見えると言う。要は体や脳をメチャクチャ速く動かすことで周りが止まって見える現象じゃな。このシールを貼ればそれを体感することができる」  ますますポカカンとするちく太。 「分かりやすく言うと実際の5秒間を5分間として使うことかできるのじゃよ。お得じゃろ?」  そんな漫画のようなことは現実には不可能だと小学生のちく太でも分かること。しかし優しい性格ゆえに店主に話を合わせることにした。 「ヘぇ、すごいね。でもたった5分ぽっちか」 「たかが5分、されど5分。時間は全ての人間に平等なもの。だからこそとても貴重なものなのじゃよ」  ちく太は「おー」と声を漏らし目を輝かせてみせた。 「ただし、使えるのは一度きり。よく考えて使うんじゃよ」
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