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或る日、私はドラッグストアへ行く途中、セーラー服姿の女子高生を見かけた。遠目にも可愛いのが分かったので声を掛けに行ってみると、釣れなかった。餌に食いつかなかったのだ。で、諦めてドラッグストアへ行き、胃薬の箱を一つ取り上げた後、レジの方へ行こうとすると、これは私服であったが、女子高生と思しき女の子が目に留まった。私の好みからするとやや太めと言わざるを得ないが、中々可愛いので私はまた声をかけてみた。
「風邪薬を求めてるのかい?」
「ええ」
「風邪ひいてるんだ」
「いえ、母の為に・・・」
「ああ、そうか、お母さんがか、大事にしなきゃねえ・・・」
漆黒の瞳をキラキラ輝かせて微笑む彼女。目がぱっちりしていて鋭くて目力があって宜しい。私は気に入り早速名刺を差し出した。
「実は私はこういう者なんだ」
彼女は名刺を受け取ると、感激して言った。
「ああ、私、知ってます。あの、私、ゴンタとポンタの読者なんです」
「そうか、それは有難い。これはきっと君と縁があるに違いない。どうだい、ちょっと喫茶店でお茶しながら話をしないかい」
「えっ」
「いや、何も援助交際をしようと持ち掛けてるんじゃないよ。だけどかなりお金になる話さ。君に指一本触れやしないし、君は只、モデルになるだけでいいんだ」
「モデルですか?」
「ああ、実を言うと、私はアトリエを持っていて漫画家だけにデッサンを趣味にしてるんだ。で、君が良いモデルになると思ったんでね。無理にとは言わないが、興味があるのならちょっと付き合ってもらいたいんだ。何も心配はいらないよ。君も知っての通り私は著名な漫画家なんだからね。ゆめゆめスキャンダラスな下手な真似はしないよ。どうだい、付き合ってくれる?」
「え、ええ・・・」
彼女は控えめに答えたが、乗り気になっているのは目の表情からありありと窺えた。
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