空蝉

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空蝉

汗も唾液もすべてを交じり合わせ、何度も何度も抱き合った。 夏の終わりの蝉のように、声が枯れるまで啼き続けた。 ハラハラととめどなく零れ落ちる涙を、長い指が優しく拭ってくれる。 優しい子。ごめんね、君を利用して。 捨てられた絶望に泣くんじゃない。 病気が怖くて泣くんじゃない。 これは“女”として生きた自分の為に流す涙。 そして別れを告げる決意の涙。 "思い出"なんて生易しいものじゃない。 これは私は女として生きた証ーーー"うつしみ”の記憶。 もう二度と会うことはないだろう。 彼は利用されただけ。悪い女に騙されただけ。 君には“思い出”になったかな。 ごめんね、優しいおばあちゃん子くん。 幼さの残る寝顔にそっとくちづけを落とし、私は部屋を後にした。 【了】
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