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「ねえ、めぐる」
「って初対面でもう呼び捨てかよ」
「本当に今日が初対面かどうかについて、ここに着いた十五分前から僕は君と話をしようとしていたはずだ。もう一度最初から話し合おう。元の位置に座って」
「応じる気があると思ってんの? は、ずいぶんおめでたい考え方」
「だったらどうして『あの呼びかけ』に応じたの。君はこの店で僕を見た時、どうして真っ先に『呼びかけてきた相手』だとわかって、顔をしかめたの」
「知らない。覚えてない、そんなの」
めぐるが、たじろいでいる。
「答えは簡単だ。僕と君は数日前の夜に出会っているから。そして君はそこで起きた事象に対する、適切な回答を心では求めているから」
沈黙を、正解と見なす。閉口して青ざめた相手に向けて、有明は殊更ゆっくりと笑んで見せた。
「誰だって正体のわからないものには恐怖を感じるよね。だからって僕らを、いや『我々の組織』を甘く見すぎないことだよ。さ、座って。今度こそまともに話ができそうでうれしいな。ああ、アップルパイ食べるでしょう? 二つ注文してくるね。実はちょっとどんな味かたのしみにしてたんだ」
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