五分で殺して

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 ぱっと見ただのチャラけた会社員にしか見えない茶髪のこの男が、一体何をしてしまったのかは知らない。  殺しの理由は訊かないのが、この業界のルールだからな。  だが、政治家でもヤクザでも有名人でもない二十代の若者が標的というのは珍しい。  若干の同情を感じないでもなかった俺だが、ヤツの生活習慣なんかを調べているうちに美人で巨乳の婚約者がいることが分かったので良心の呵責は消滅した。  なんだよこいつリア充じゃん! リア充爆発しろ! っていうか俺が撃っちゃる!  俺のプロフェッショナルな魂に火を付けちまったのが、ヤツの運の尽き、ってことだぜ。  青木の行動パターンは判で押したように正確で、変化というものがなかった。  たまにいるよね、こういうヤツ。  丁寧な暮らしとかルーティーンとか言ってるけど、これ、うちの業界からしたらほんとラッキー以外の何物でもないから。  朝の七時に起床して七時五分に窓を開け、空を見上げて一つうなずき、神妙な顔で窓閉めて。  ほんでもってその十八分後に玄関からスーツ姿で出てくる。  月曜と木曜日にはビニール袋に入れたゴミを持ってくるので最大四分の遅れを生じる。  今日はゴミの日じゃないから、七時二十三分にいつものように出勤する、つもりなんだろう、ヤツは。  ところが二十三分まで生きちゃいねえ、ってわけよ。  自分の部屋の正面にある高層マンションの屋上から命を狙われることだってある。  賃貸物件探すときにはせいぜい気をつけるんだな。ま、来世での教訓にでもしてくれや。  と、そこで俺は気づいた。
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