五分で殺して

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 ……あれ? おかしい。  窓が開かない。時計を確認したら七時七分を過ぎていた。  ん?  今まで二週間、毎朝見張っていたが青木は土曜も日曜も一度だって、二十秒と遅れたことはなかった。  鳩時計の鳩にだってなれるぞという几帳面さで七時五分に窓を開ける男がなんだって、今日に限って……遅れている?  まさか俺が狙っていることを知る由もないわけだから……たまたま、ほんとたまたま今日だけ寝坊したってこと?  え、そんなことってあんの?  無表情の俺の額からつうと一筋汗が流れる。  ……暑い。  クッソー、ヒットマンなら黒服という俺の美学がここへ来て仇になったか。  まだ七時そこそこだというのに、太陽がさっきからジリジリ照りつけてて本気で暑い。  おいこら、青木! はよ出て来い!  俺はここで日の出前から待機してんだぞ。  暑いんだぞ。  この格好で熱中症なんかなって見ろ、お前……救急隊員が「はい?」ってなるわ。  名前とか訊かれて保険証出した時点で俺完全に詰みやないかい!  俺だってなあ、俺だって国民保険はちゃんと入ってんだよ。  フリーランスの仕事はキツいからな!
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