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混乱して何か言いたいけど喉渇ききってるからヒュウヒュウ音が漏れるだけの俺に、青木(偽)はちょっと肩をすくめてそれから何の躊躇いもなく、引き金をひいた。
あっけないくらい軽い破裂音。
ズンと胸に圧がかかって、熱いと思った。
そしてしばらく遅れて鋭い痛みと我慢できないほどの吐き気。
「そんな、バカな……」
こんなチャラけた茶髪の男が殺し屋とか……胸を押さえてのたうちまわる俺の耳に青木(偽)のスカした声が聞こえた。
「アデュ、口の軽~い殺し屋さん♪」
最近の銃は硝煙の匂いなんか吐かない。
俺以外は何の変哲もない平凡極まりないマンションの屋上の、ドアがバンと音を立てて閉まった。
朦朧とする意識の中、灼熱の太陽と鉛玉の熱に灼かれて俺は思う。
俺はあんな若造にやられたんじゃないぜ。
時代という名の妖艶なヴァンプに……イカれちまっただけ……なの、さ……。
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