五分で殺して

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五分で殺して

 あと五分の命だ。  かわいそうに。  俺はこの二週間ですっかり見慣れた窓に照準を合わせて、コンクリートの屋上にべったりと腹をつけてヤツを待つ。  個人的な恨みなんかは何にもないが、あと四分数十秒でヤツの額に風穴が開く。  今この瞬間、ヤツにとって俺は死神だってことさ。  ヒットマンという名の、黒衣の死神。  俺の唇が片方無音で歪んで、規則正しく心音が鳴る。ヤツがあの窓を開けるその時を、ただ静かに待っているのだ。  今回のターゲットは青木薔矢(あおき しょうや)という名の若造。  最近の若いヤツは名前からして仰々しくて呆れちまう。  ホストじゃねえんだから、親も名付ける前に一度よーく自分らのツラ思い出してから役所に届けろっつうの。  俺らの世代はマサオとかタカシとか、もっと平凡な名前をつけたもんだぜ。
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