蛍、そして出逢う

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蛍、そして出逢う

小さい頃、蛍が見たくて夜独りで近くの川辺へ行ったことがある。 お母さんは仕事であまり家に居なかったから、いつも寂しかった。しかも、学校では友達も出来なくて、、。私が何かすると、皆笑ってた。理由はわからないけど――。 自分のせいなんだと思う。 だから、せめて蛍と仲良くなりたいって思った。それでしばらく蛍を眺めていた。蛍のお尻にある儚い光がちらちらと、濃い緑を薄く照らしていたんだ。とっても綺麗だった、、。 そのまま私は、ずぅっと蛍を見つめてた。 気が付くと、さっきまで薄暗かった周りが真っ暗になっていた。 ふと何時間経ったかな、と思って川辺の時計台を見ようと―――――――。 「なぁ、お前いつまで蛍見てんだよ。そんなに楽しいか?」 急に自分の横から話し掛けられ、後ろの方に飛び退いた。 「わぁっ!あなた、、だぁれ?」 いつの間にか、隣に私と同じくらいの歳の男の子がいた。顔は夜だからよく見えないけど、声が高いし、背も同じくらいだったから、歳も同じくらいだと考えていいと思う。でも、本当に何も気配がしなかったから、ずっと気づかなかった。 「え、えっと、、。俺は、夏川(なつかわ) 蛍斗(けいと)。お前は?」 蛍斗くんは自分の名前を言ったあと、私の名前も尋ねてきた。 「私は鈴村(すずむら) 美咲(みさき)!蛍が付いているお名前なんて、いい名前だね!」 「そうか、、?どうも。」 そう言ったら、蛍斗くんの耳は少し赤くなったように見えた。 それにしても、言葉遣いから大人っぽかったから、今から思えばホントに同じくらいだったのかな?と思う。それでも、私は無邪気に聞きたかったことを質問した。 「ねえねえ、蛍斗くん!いつからここにいたの?」 「俺は、、。」 考えていたのか、少し間を置いてから蛍斗くんはゆっくり話した。 「ずっと初めからいたんだ。気づかなかったか?」 「うん、、。」 「ま、俺は影薄いから仕方ないさ。気にしてないから大丈夫。」 さっきまで厚い雲で隠れていた月が見え、目の前には少し恥ずかしそうに俯きはにかむ少年がいた――――――。
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