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空蝉
見上げた彼女の向こう側―――薄いカーテンの向こうには、少しだけ欠けた月。
熱気と汗の匂いで満たされた薄暗い部屋。荒い息遣いとベッドの軋む音。細い声。
つけたばかりのエアコンじゃ追いつかないほど急速に上がった熱が、夢から醒めるなと俺を追い立てる。
見上げた先には、彼女の動きに合わせて揺れる双丘。
満月になりきれない十三夜月に照らされた肌から、揺れに合わせて雫が滑り落ちる。
「あなたが言ったんだ………ちゃんと思い出作ってください、よ」
荒い吐息を奪うようにその口を塞ぎ、体を反転させてその小さな体を組み敷くと、汗を拭うことすら忘れて、ただ深く強くお互いを求めあった。
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