噂は研究の始まり

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噂は研究の始まり

「ぼくの付き合っている子ユリちゃんていうんだけど、ユリちゃんと同じクラスの子がねカレシに2週間くらい前にフラれちゃったのよ。  その子が失恋した日にね、白い猫が目の前にあらわれて花をくれたんだって。その花を手帳の間にはさんで持ち歩いていたらーー次の週にはめちゃくちゃかっこいいカレシができたんだってさ! ユリちゃんの高校は女子校だからそういう恋愛の噂はすぐひろまっちゃうんだよね。」  やや色素の薄い髪の毛が動くたびにサラリと揺れる。飛島はいかにもモテそうだった。近づきやすく話しやすく女の子の話をよく聞いてあげるタイプだ。 「白い猫の噂はその1件だけですか?」稗田はまだこの話を聞く気らしい。 「いやいや、それが他にもあるんすよ! 片想いをあきらめようとしていた子が花をもらったら両想いになって、40歳を過ぎた人も花をもらってからお見合いがうまくいったんだって。恋愛成就の白猫様って呼ぶ子もいてーーでもその白い猫にどうやったら出会えるかは誰も知らない。これってオカルトだよね?」  飛島の話しを聞いている部長の横顔が鈴木には意外だった。物知りで落ちついた稗田に、こんな夢みがちな恋の噂は似合わないのだ。 「その白い猫、オカルト研究部で探してみませんか?」  部長の提案に鈴木は我慢できずに反論してしまった。 「どうやって探すんですか、町中の白い猫を1匹ずつ探すんですか? 飛島くんの話だって、ただの偶然じゃないんですか? 猫に会わなくたって皆んな両想いになったかもしれないじゃないですか!」  入部早々、先輩にたてついている自分に鈴木は余計にイラだっていた。 「鈴木くんの言うように偶然が重なっただけかもしれません。ですが飛島くんのいまの話が、ぼくには昔話に聞こえたんですよ。この話が語り継がれれば坂下町の伝説になるかもしれません。伝説の誕生に立ち会っているかもしれないと思うと、調べてみたくなりませんか?」  この部の年間計画はどうなったのか?  2人の計画性の無さに鈴木は居心地の悪さを感じた。しかし稗田の言うことには妙な説得力があった。いま起きていることが、いつか歴史と呼ばれるようになるのだ。  ーーこうして、高校生男子3人のアテのない白猫探しが始まった。
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