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坂下町の地図
伝説を読み終える頃、鈴木の腕には軽く鳥肌が立っていた。
「ーーここに出てくる大鳥って、もしかして大鳥女子の大鳥ですか?」
「飛島って、ここにいる飛島くんの飛島ですよね??」
鈴木は立て続けにたずねた。
「説明することがたくさんありますね。」
部長の稗田は、微笑みながら鈴木が持ってきた坂下町のマップを指でなぞり説明をはじめた。
「坂下町は山に囲まれた盆地です。盆地の一番標高の低い位置にあるのが、足窪池。その側で盆地にぽつんと島のようにあるのが飛島です。この辺りで飛島神社は有名ですから鈴木くんもご存知かと思います。飛島くんは神社の関係者の方ですよね?」
「あーうん、ぼくは関係者って言っても飛島神社の三男家の三男くんだから、なーんもないんすけどね。ちなみに従兄弟で長男家の長男くんも同じ学年にいるんだけど、からまれると面倒だから気をつけてね。」
話がさらに進んでしまわないうちに、伝えておかなければと鈴木は慌てて割り込んだ。
「ぼくは、中学まで他県にいたので、飛島神社のこともよく知りません。父親が先に転勤でこっちに来ていたので高校入学を期に家族みんなで引っ越してきました。この辺りの歴史はこれから勉強します。」
「鈴木くんてほーんと真面目だよね!ぼくも地元の歴史なんて知らないんだから、心配しないで!神社が関係する話は子どもの頃から聞かされて知ってるだけだし。」
鈴木と飛島の2人の会話を待って部長は話を進めた。
「では、話を続けますよ。少し困ったことに白猫の祠は大鳥女子高等学校の敷地のすぐ側にあります。ぞろぞろと男子生徒が訪れると女子高なだけに変な誤解をされないか心配ですね。」
「ぷふっ 部長さんも真面目すぎだってばっ!!カノジョ迎えに来ましたーって顔して行けばいいんすよ。何か言われたら、ごめんなさーいっ(ペロ)ですむの!」
「彼女迎えに来ましたという表情は…飛島くんにお任せしますよ。」
さすがの部長も恋愛系の話は苦手らしい。
「それと偶然なんすけど、ぼくの母さんが祠の真ん前でお店やってんの。表向きはコーヒーショップ、裏の顔は知る人ぞ知る占い師ってやつ。その店で聞き込みしたり張り込むってのはどう?」と飛島は双眼鏡を目に当てるポーズをした。
それは顔で演技をするより、ずっと良さそうな提案だった。
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