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蓮はへらりと笑って、あたしの頭を撫でようとする。反射的に身を縮めてそれを躱した。目的のものに触れることができなかったその手を、蓮は寂しそうに見つめて「ごめん」と呟く。その表情に申し訳なさを感じながら、離れた場所から蓮が注文しているのを眺めていた。
アイスを受け取って振り返った蓮は、あたしの姿を見つけると嬉しそうに笑った。なんだ、全然平気そうだ。店の外のベンチに並んで座る。
「勝手にコーンにしちゃったけど、よかった? ってもう遅いけど」
「大丈夫。いただきます」
すでに溶け始めて、垂れてしまいそうなところを舐め取ってから、スプーンで掬って口に運ぶ。暑い日のアイスって格別だ。期待通りの甘酸っぱさに頬を緩ませていると、蓮の視線に気づく。
「蓮は食べないんだ?」
「うーん、食べてたらさ、写真撮れないから。ね、ユウのこと撮ってもいい?」
「……もう撮る気だったんでしょ。どうぞ、お好きにしてください」
「あ、でも一口だけもらっていい? 僕もこのふたつが大好きなんだ。ユウと好みが合って嬉しい」
目がなくなるような笑い方で、きっと本心から言っているんだろうなと思う。人懐こい空気とか、角のない話し方とか、柔らかそうな髪の毛とか、蓮を形作るいろいろなものが優しいんだ。
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