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「蓮、あたしね」
「ユウ、時間ないから走るよ」
蓮はあたしの手を握り返して走り始めた。すぐ近くの駐車場に着くと、あの日と同じ車に乗せられる。海みたいな、蓮の匂いで満たされた空間。
「そういえば抜けてきて大丈夫だったの?」
「うーん、良くはない。けど、無理言って抜けてきた。どうしても見てもらいたかったから」
運転中の蓮はまっすぐ前を見たままで、どんな表情をしているのかはわからなかった。
「会えなかったらどうするつもりだったの?」
「……あー、それは考えてなかった。会えてよかった。あ、もうすぐ着くよ」
滑らかな動きで車を駐めると、蓮はすぐに車を降りた。追いかけるようにして車外に飛び出す。生温い風があたしと蓮の間を通り過ぎていった。立ち止まった蓮が振り返る。
「ユウ、早くおいで」
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