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夏の海と脳の誤作動
まだ、夏を終わらせたくない。そんな理由で、電車に揺られながら海を目指していた。流れる景色が次第に知らないモノに変わっていく。灰色の街から緑に変わって、青が広がる。子どもみたいに窓に手をついて外を見ていた。
海って滅多に来ないから、だから、行きたいって言ったのに。一緒に見たかったって泣いて縋るほど、たぶんそんなに好きじゃなかったけど。ぐるぐると回り続ける思考は、それでも痛いところを刺激しないように本当の気持ちを隠してしまう。気がする。終わったことをあれこれ考えていてもしょうがない。せいぜいこのあたしを逃したことを悔しがってろ。
開放的なホームに電車が滑り込むと、疎らに座っていた乗客がばらばらと立ち上がる。肌寒いと感じるくらいに冷え切った車内から一歩外に出たら、暖かいと感じたのはほんの一瞬で、少し潮の匂いの混ざる熱い空気が肌に纏わりついてくる。
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