夏の海と脳の誤作動

2/10
前へ
/17ページ
次へ
 駅前のコンビニで日焼け止めを買う。化粧もどうせ汗でドロドロだし、とティッシュで軽く押さえてから顔に塗りたくる。すぐにでも海に向かいたかったけど、電車の旅は意外と長くて、お腹が空いてしまった。道なりに進んで、目に入ったカフェに吸い込まれるように足を踏み入れる。 「すいません、ひとりです」  出迎えてくれた店員にそう言って、心の中で嗤う。ひとりで来たことを詫びてるみたいだ。窓の近く、外が見える席に案内される。波の音が聴こえる。自然のBGMって贅沢だ。  メニューに『おすすめ』とマークされたピザとサラダを注文したけれど、テーブルの上に並べられた料理たちは到底ひとりでは食べきれそうにない。シェア前提の料理。さっきの"すいません"は残してしまうことへの前払いだったのかもしれない。 「……美味しい」  思ったよりも脂っぽくなくて、ひょいひょいと食べれてしまったけれど、それでもピザは二切れほど食べきれずに残してしまう。何度か悩んで、結局指先を紙ナプキンで拭って席を立った。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

87人が本棚に入れています
本棚に追加