夏の海と脳の誤作動

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 シャッター音に振り返ると、大きなカメラを構えた男が立っていた。ファインダー越しの瞳に無言で文句を訴えかける。涼しい表情をしたその男は近寄ってきて、あたしの頭に自分が被っていた帽子を乗せた。 「日射病になっちゃうよ」  随分と馴れ馴れしい男だと思った。彼の帽子は少し大きくて、ちょっと動いたら目まで隠れてしまった。 「別に、あなたには関係ない」  帽子を男の胸元に突き返す。近寄ったら、少し人工的な海の香りがした。香水だろうか。清潔感のある匂いで、嫌いじゃないと思った。 「勝手に写真撮らないでください」 「じゃあ、断れば撮らせてくれる? すごく、綺麗だったからさ。消しちゃうのは惜しいな」  そう言いながら見せてくれた写真は、息を呑むほど美しいものだった。海も、空も、風に(なび)くあたしの白いワンピースでさえも。確かにこのまま消してしまうのは勿体ない。 ――カシャ
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