夏の海と脳の誤作動

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「ユウ、どれにする? 好きなの選んでいいよ」  海の近くで食べるアイスなんて、勝手にかき氷だと思っていた。蓮の言う"うんまい"アイスの正体は、ジェラートだった。ガラスケースの向こうはカラフルで、見ているだけでも幸せな気分になる。視界の隅に入った濃いピンクと薄いピンクが気になる。フランボワーズとピーチ。美味しそう。食べたい。 ――何その組み合わせ。男ウケ狙ってんの? 優香だわ。  その濃淡のピンク色のアイスを選んだだけでこんなこと言われたことがあったっけ。ただ食べたかっただけなのに。こういう妬みたっぷりの言葉を何度か浴びせられて、周りよりも容姿が優れていると気がついた。弱かったあたしはその一つひとつにしっかり傷ついて、同性の友達なんてものは次第にいなくなった。  だからといって、異性の友達ができたかというとそうでもない。男達(あいつら)は、あたしを"彼女"にして連れ歩くことで自分のステータスが上がると思っているだけ。そんなことわかっているのに、あたしは偽りの愛情に騙されて、好きになって、絶望する。何度も、何度も。  隣に立つ蓮のことを横目で見る。あんたも、同じなの? 「あたし、これが食べたい」  どうせ、二度と会わない人間だ。媚びてると思われようが気にする必要もない。ずっと欲しくないフリをしてきた可愛らしい色合いのアイスを指差す。 「あ、それにする? 、わかってるね」
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