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3月の日曜日の決勝戦当日、私はテレビ局の控室で自分の出番を待っていた。
決勝はテレビで全国に放送されることになる。
テレビに出演するこんな大舞台に立ったことがない私は、極度の緊張に襲われていた。
手足がガタガタと震えて止まらなかった。
控室に1人でいるとテレビ局のスタッフの方が、
「そろそろ出番ですので、スタジオに移動お願いします。」
と声をかけられた。
私がスタジオに行ってステージの袖に行くと、私の1つ前の出番のお笑い芸人がステージに上がっていった。
この時、テレビ局のスタッフの方から、
「本番5分前です。」
と声をかけられた。
私がさらに緊張して薄暗いステージの袖で出番を待っていると、私は誰かから話しかけられた。
「千明、お客様に楽しんでもらえることだけを考えて、全力で頑張りなさい。
千明ならそれができると信じているよ!」
私はその声に聞き覚えがあって思わず、
「おとうさん!」
と言葉を出してしまった。
するとさらに、
「千明、私は千明のすぐ近くにいるから安心して…」
と声をかけられた。
この声は父に間違いないと思った私は、父が私のすぐそばにいてくれるという安心感からか緊張がほぐれて落ち着きを取り戻し、
(よし、頑張るぞ!)
と自分自身に言い聞かせた。
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