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「センチメンタルか? なぁに考え込んでんだよ。榊らしくねーなぁ」
日焼けした斎藤の腕が肩に回る。
「うっせーな。てか、お前はもう出したのかよ?」
「あぁ、出したよ。とっくにな。俺に決める権利とかねーし、親が勝手に決めたこと書かされた」
「お前も大変だな。野球どーすんだ? やめんのか?」
「そーだな。あーっ! クソ、甲子園行きたかったぜ」
斎藤とは小学校から一緒だ。家が開業医で、兄貴も医大生だ。斎藤もその道に進むことを期待されている。らしい。本人は野球を続けて、できることならプロにってのが、その頃からの夢だって聞いた。けど、県大会決勝で負けた。多分、これで終わりなんだろう。
「お前、それでいいの? 野球できなくて」
「いいもなにもねーだろ。それしか道がねーんだからよ。まぁ、俺なんかまだ自由にさしてもらった方だと思うぜ。中学ん時の水野いたじゃん。家が歯医者の。あいつんトコなんかもっと大変そうだったよ」
「そっかぁ」
「うちは逆に自分で決めろって。けどよ、どーしたらいいんだか」
「まぁな、自由にって言われても分っかんねーよなぁ」
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