33人が本棚に入れています
本棚に追加
2
昔、と言っても、そんなにあるわけでもない経験を思い返しては、
〝普通〟の〝お付き合い〟ってどういう物だったっけ?
と思考を巡らせるけれど、そもそもそんなに経験値がある訳でもなく、
結局は自問自答してぐるぐるするだけ。
「…ま、…おい、…」
ふいに何か聞こえた気がして、はっとした。
「…川島、おいって」
「えっ、あ、……」
隣の席に座った〝友人〟、というか〝悪友〟と言うべきか、そんな存在の駒場がジト目で俺を見ていた。
「お前何しに来たんだよ」
「…は?何って…講義取りに」
「ろっくに聞いてもねぇくせに…」
頬杖を付きジト目で俺を見ながら、小声でそう言う。
「お前には言われたくない。」
「っるせぇな、少なくともお前よりはマジメに聞いてるっつの。」
たった今俺に話しかけてる奴が良く言う。
ため息を一つつき、駒場が続ける。
「お前、最近何なの?」
「……何が、」
ホワイトボードに視線を移して、講義を聞く振りをしながら駒場に相槌を打つ。
「いっつもなんかシケた面して考え事しててさぁ。…こっちまで滅入るっつの。」
「……。」
シケた面、
俺、そんな顔してたのか。
「なんかあんならさ、いい加減話せよ。飲みにでも行ってさぁ。」
「お前が飲みたいだけじゃん、それ。」
一瞬、駒場にも気遣いなんか出来るのか……と思いかけたけど、
〝飲みに〟という言葉で魂胆が分かった。
「とにかくさ、まず飲み行こうぜ、飲み!」
「……めんどくせぇ」
「良し、決まり!ちょうど今日金曜日だし、この講義終わったらな。場所探すから。」
半ば無理矢理進む話に、俺はまた何回目かのため息をついた。
最初のコメントを投稿しよう!