帰ってきた男

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帰ってきた男

生まれ育ったこの町に帰ってきたのは、先週末のことだった。 就職して3年、高校を卒業して地元を離れた俺にとっては、7年ぶりの帰郷だ。 「(レイ)くん、だよね」 振り向けば 胸の谷間が チラリズム ―― 禮。 「やっぱり、庵堂(アンドウ)くんだ。覚えてる? わたしのこと。アンノだよ、沢渡(サワタリ)杏乃(アンノ)」 人に質問しておいて自分で答えまで言う、食い気味の話し方は変わらない。 「男食いの(マンイーター)アンノ!」 ひと目見ただけで分かったよ。 昔はよくつるんでたからな。 高校の頃、大塚瑠璃(ルリ)と彼女で、男子の人気を二分(にぶん)していた。 ビューティーの大塚、セクスィーの沢渡と呼ばれた、必殺悩殺(ダイナマイト)ボディは健在だ。 25歳の彼女は、フェロモンが目に見えるほどのエロ社会人に成長していた。 「エロ可愛いさに、磨きがかかったでしょ」 アンノはふいに、スターファックス・コーヒーの方を指さした。
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