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飼ってあげる 8
*
オレは緋音さんを、後ろから抱きしめる。緋音さんは抵抗することなく抱きしめられて、オレの腕の中で体を捻(ひね)って、オレと正面から向き直る体勢になる。
そしてオレの背中に腕を回して、ぎゅっと抱きつきながら、爪先(つまさき)立ちになって、キスをせがむ。
少し口唇を尖らせて、目を瞑(つむ)って、愉(たの)しそうにキスを待つその様子の、全部が可愛くて。オレは堪(たま)らずキスをした。
ぎゅーーーーっって抱きしめながらキスをして、ベットに押し倒した。
打ち上げは朝までかかり、来てくれた人全員を見送って、オレは緋音さんを自宅まで送り届けようと思っていたのだが。
オレの家の方が近いから、オレの家に来たいと緋音さんが言うので。
「珀英の家初めてーー!初体験」
見た目に反して酒豪の緋音さんは、散々飲んだ癖にほろ酔いくらいの感じで、少しテンション高めに言った。
他のメンバーやスタッフは、緋音さんがオレの家に行くと言っているのを見て、仲良いなーって感じの温い目で見守りながら送り出してくれた。
電車がまだ動いていない時間だったので、タクシーに乗ってすぐの自宅に帰り、緋音さんを初めて家に入れた。
二人っきりになったら、急にムラムラしてきて、オレは家の中を探索(たんさく)しようとしていた緋音さんを抱きしめていた。
ベットに押し倒された緋音さんは、急に冷めた感じで、
「シャワー浴びなきゃ嫌だ」
「え・・・」
「浴びてこい」
「はい・・・」
逆らえるはずもなく。ライブ後に洗ってはあるけど、打ち上げでお酒も飲んでるから、汗もかいたろうし臭いもするのかな。
オレは緋音さんが寝ないように、速攻でシャワーを浴びる。髪はライブ後に洗ったから洗わなかった。
こんな長い髪洗って乾かして、なんてやってたら、絶対緋音さん寝るって。
緋音さんは辛(かろ)うじて起きて待っていたので、風呂場に案内して使い方を教えて。
緋音さんがシャワーを浴びている間に、バスタオルを用意していて、気が付く。
着替えがない。
緋音さんが家に来るなんて思ってなかったから、緋音さんが着れるサイズの服がない。
オレの服で代用するしかないけど、どうしよう・・・。
はた、と気づく。今オレはパジャマの下だけ履(は)いてて、上は着ていない。上を着て寝るのが苦手だからいつも着ないのだが、それを緋音さんに着てもらえばいっか。
そんな軽い思いつきで、オレはパジャマの上を探しだして、バスタオルの横に置いておいた。
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