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その廊下の暗がりに、一匹の大きなトラがゆっくりと音もなく歩いている。私は一瞬ギョッとしたが、トラは私に構わず右に左にウロウロしている。
向かいのベンチには、いつのまにか少女がひとり座っていた。真っ黒なレースのドレスを着てうつむいていたが、少し顔をあげると私の方をジッと見つめた。顔色は死んだように青ざめ、唇は黒く、目の周りには紫色のクマができている。
気味の悪い幻影に少しげんなりして、窓の方に視線を移した。窓の外は真っ暗で、月も街灯の明かりも見えない。その窓の外に、銀色のUFOがゆっくりと降りてきて止まる。キャノピーから、宇宙人の異様に大きな虹色の目がこちらを見ている。
私は立ち上がり、窓に近寄った。巨大なティラノザウルス・レックスが、窓の外をゆっくりと横切って行った。
ため息をつき、私はベンチに戻ると、座って頭を抱えた。背筋が凍るような不安と恐怖が襲った。そして、まだ幼かった頃のことを思い出した。
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