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 6才の初夏のある日、水疱瘡(みずぼうそう)にかかっていた私は、数日学校を休んでいた。赤ちゃんの頃にワクチンを打っていたのだが、それでも学童期にかかることがある。この夏2回目のワクチンを打つ予定だったが、その前にかかってしまった。とはいえ、1回でもワクチンを打っていたせいで症状は軽かった。発熱は1日、ブツブツも足にちょこっとできただけだった。つまり、私は元気いっぱいで、時間と体を持て余していた。  持て余した時間を計測するにはストップウォッチが最適だ。デジタル表示で通常は時計として使えるし、アラームモードもあった。親から「ゲームはあと15分」と言われたらアラームモードを正確に15分セットした。親と言うものは「あと15分」と言っても、10分で切り上げさせようとするからだ。  母が朝の検温をして、足のブツブツを確認した。 「もう大丈夫みたいね。ちょっと散歩に出てみる?」 「どこに行くの?」 「クロエを連れて公園に」  クロエは、その頃飼っていたテリアの仔犬だ。 「リードを持ってもいい?」 「いいわよ」  そのころの私にとって、仔犬のリードを持たせてもらうのが、何より嬉しかった。私は久しぶりに外着に着替え、帽子を被せられた。ストップウォッチを首にぶら下げて、準備完了。
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