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「トラ?」
普通の母親なら、こう言うだろう。
「トラに襲われるわけないじゃない!」と。
もしそう言われたら私は恥ずかしくなって、自分が怖がっていることを母に伝えることができなくなってしまっただろう。
だがその時、母はこう答えた。
「もし、トラが近づいて来たら・・・」
母はスーパーマーケットの入り口を指差した。そこには『日曜朝市』と書いたノボリが立っていて、果物が山積みになっていた。
「キウイフルーツわかる?」
「わかるよ。緑の毛の生えた果物でしょ?」
「そう。もしトラがいたら、まずひとつトラに投げる。そして、もうひとつを遠くに投げる、いい?」
「お店の物取ってもいいの?」
「ふつうは絶対ダメだけど、この場合非常事態だから。後でママがちゃんとお支払いするわ・・・いい?」
「うん」
「じゃあ、大丈夫ね!」
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