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prologue
その日はひどく雨が降っていた。
もう限界だった。打ちつける雨は、まるでわたしの心を表しているようだ。とても冷たくて、雨に濡れた前髪は顔に張り付いて前もよく見えない。でももう、見る必要もないか。わたしは歩道橋の縁に足をかけた。
だって次の瞬間、わたしはこの世に存在しなくなるのだから。
そう思って目を閉じて重心を傾けると、体がゆっくりと前に倒れていくのを感じる。はずだった。
「先輩……! まって……まって……!」
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