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正直私は、先輩になんて声をかけていいかわからなかった。でもあの時、私は先輩に飛び立ってほしくなかった。だって先輩と過ごした日々はあんなにキラキラしてて楽しかったから。あの時私を守ってくれたのは明日香先輩だったから。だから今度は私が守ってあげたい。
だから今の私にできることは、明日香先輩の目を見て、こう言うことだけだった。
「明日香先輩。つらかったんですね。でもこれからは、私が明日香先輩を幸せにしてみせます。だから……いっぱい泣いてください。そしてそのあとは、いっぱい笑ってください。明日香先輩の笑顔が、何よりの宝物なんですから。先輩が生きていることが、先輩と過ごしたこれまでとこれからの時間が、私にとって宝物なんですから」
明日香先輩の顔が少しずつ歪んでいくのが見えた。そして先輩は両手で顔を覆って呟いた。
「やっぱり怖いな。詩織もいつかどっか行っちゃうんじゃないかって」
「どっか行っちゃったのは先輩の方じゃないですか」
「……あはは、確かに」
「……でも私は、こうして先輩を追いかけてきました。少しくらい信じてくれてもいいんじゃないですか」
「……うん、ごめんね」
「許しません」
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