月を捕まえて

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 でも私は、その答えがあまりに明日香先輩らしくて、なんだかおかしくなってしまった。 「笑ったでしょ」 「笑ってません」 「笑った!」 「ふふ、笑ってませんよ」 「もー……バカにしてるでしょ〜……」 「いえ、いつも通りの明日香先輩で安心しました」 「それ褒めてる?」 「どうですかね。でも––––」  でも、明日香先輩なら本当に捕まえてくるかもしれない。もし本当に捕まえられたら。 「本当に捕まえられたら、二人の愛も永遠かもなって思います」  意図せず私の言葉と明日香先輩がエンジンを切るタイミングとが重なってしまう。だから音楽も一緒に止まってしまって、夜の帳を下ろすように私たちの間に沈黙が流れた。月明かりに揺れる明日香先輩の表情は儚げで、どこか不安そうだった。  でももし、明日香先輩が月を捕まえるのを諦めてしまったら?  その時二人の関係は、今と変わらずにいられるだろうか。 「じゃあ、捕まえに行こっか、月」  明日香先輩は私の手に触れた。そして精一杯の笑顔を見せた。その手が少し震えていることも、笑顔がぎこちないのも、私の心にそっとしまっておこう。
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