月を捕まえて

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 今日の私は意地悪かもしれない。明日香先輩が私にとってどういう存在なのか、急に確かめたくなってしまった。  二人で車を降りて、海へ向かった。そこはビーチではないものの、砂浜と広大な海が一面に広がっている良いスポットだ。私たちは海岸線と平行に歩いた。私たちが歩いたところは、砂浜に足跡がついていて、振り返ると二人分の足跡が並んでいた。が、それも波に何度かさらわれると徐々に形をなくしていった。  今日は満月で、月の光がゆらゆらと水面に揺れている。 「ね、夜の海も悪くないでしょ」 「そうですね。まあ、先輩と二人ならどこへ行っても悪くないですけど」 「素直じゃないな〜詩織は。どこへ行っても良い、でしょ?」 「……はい、そうです」  軽口を叩いた先輩に、私は声のトーンを普段より二段階ほど落として答える。そのせいか、明日香先輩は驚いたように目を一瞬見張った後、すぐに不安そうに睫毛を揺らした。  今日の私は、本当に意地悪だ。自分の手の中にあるものが、本当に離れていかないか確かめたくて仕方なかった。 「明日香先輩。こうして先輩と歩んでいけるのが、今はとても幸せです。でも、先輩は一人でも生きていけますか?」
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