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「……どうしたの、急に」
「私はいついなくなるかわからないってことです。それこそ、明日事故で死ぬかもしれない」
私がいない世界でも先輩には生きていてほしい。それは本心だった。しかし同時に、私のいない世界で生きていけるような人間になってほしくなかった。あの人みたいに。
「そうなった時、先輩には生きていてほしいんです。私と生きてた世界は、あんまり悪いものじゃないから、これからも少しだけ生きてみようって、そう––––思ってほしくて」
半分は本心だった。でももう半分は、私の中のどろどろとした感情が、月夜に映る明日香先輩の不安げな姿を捉えて離さない。
私は多分、捨てられるのが怖いんだと思う。依存されたいのか、と言われればはっきり違うとは言えない。だってきっと、依存することは苦しい。いつか人はいなくなる。それならせめて、一緒に死ぬという選択肢をとってもいいのではないか。結局はそれが依存した関係だとしても。
でもそれが永遠の愛でないと、誰が言い切れるだろうか?
私は海に向かって歩き出した。膝あたりまで水が浸かる。この時期とはいえ、夜の海は冷たかった。
「だから先輩。私がいなくなっても––––」
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