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「じゃあ変えちゃおう、そんな運命。そんでもって、ずっと二人でいられる未来を探そうよ。わたしは詩織が、詩織の想いをわたしに伝えてくれて––––救われた。最初は逃げたけど、二回目は逃げなかった。だから詩織もわたしを信じてよ」
「明日香先輩……」
私にとって明日香先輩は光だ。だから明日香先輩がいなくなって一人で生きていけないのは、きっと。きっと私の方だ。
「わたしが不安にさせてたんだよね。またいつかみたいに、ふっと消えてしまうんじゃないかって。でも大丈夫だよ、詩織。詩織がいるなら、わたしも、きっと大丈夫だから。だから詩織が、わたしのこと捕まえててよ。わたしは詩織のこと、捕まえてるから」
そうして先輩は私の額にキスをして、手で涙を拭ってくれた。
「……明日香先輩、手、拭いてください。海水が目にしみます」
「あはは、ごめんごめ––––」
私はその言葉を塞ぐように唇を重ねた。そして額をくっつけて、見つめあった。
月明かりだけが私たちを照らしていた。水面に揺れる私たちの影は、脆く、儚く、消えてしまいそうだったけれど、確かにそこに存在していた。
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