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邂逅というより仕組まれた再会
「んは……懐かしい匂いがする〜!」
駅のホームに降り立って最初に聞いたのは、明日香先輩の郷愁から来る言葉だった。
「先輩、帰るの久しぶりなんですか?」
「うん、大学入ってからは帰らなかったしね……」
明日香先輩が申し訳なさそうにちらちらとこちらの顔色を伺っている。ああ、なるほど。私たちの家は近いので、帰省すると私にエンカウントする確率が高くなるから気まずくて帰省しなかった、といったところだろう。
「違うの、課題とかバイトで忙しかったし……その、ね?」
「まあ、別に気にしてませんよ。今こうして隣にいてくれるならそれで」
「ほんと? 詩織ちゃんだいすき〜」
はいはい、と適当に受け流すフリをするが、やっぱり好きな人から好きだと言われるのは嬉しい。顔がニヤついていないだろうか。明日香先輩はこういうところに敏感だから、気づいているかもしれない。
「あ、パパとママだ」
「おかえり、明日香。思ったより元気そうで良かった」
「詩織ちゃんもお帰りなさい。今日はうちに泊まってくの?」
「こんにちは、おじさん、おばさん。一度母のところに顔を出してから、今日はお邪魔させていただきます」
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