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「ずっと前から先輩のことが好きでした。私言いましたよね、先輩が高校を卒業する時。先輩は笑ってごまかしたけど、私は本気だった。だからその後先輩と同じ高校に入ったし、今年先輩と同じ大学に入った。次は先輩と同じ会社に入ります。全部先輩を追いかけて––––」
「ちょ、ちょっと待って。それってほぼストーカーでは……?」
「否定はしません」
「いやしてよ」
「とにかく、そこから降りて、早く私と付き合ってください。それとも接吻が必要ですか? まったく仕方のない姫ですね」
そう言ってずかずか詩織は近づいてくる。このままだと本当にキスされそうだ。
「ちょ、わ、わかった、降りるから。降りるからキスはやめて」
そうして初めて、わたしは自分の足が震えていることに気づいた。
「……ごめん、手貸してくれる?」
「喜んで、姫」
両膝をがくがくさせながら、わたしは詩織に支えてもらってゆっくりと片足ずつ降りた。
「ふう……ありが––––」
詩織はわたしをきつく抱きしめた。細い肩は震えていた。途端にわたしは心がすっと寒くなって、ほんの少し申し訳ない気持ちになった。
「明日香先輩……もうどこにも行かないでください……やっと……やっと、追いつきそうなのに……」
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