涙に濡れたキスの味

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「……先輩、お風呂一緒に入りましょうか」 「え、うち湯船狭いよ」 「いいですよ、狭い方がお互いを感じられるじゃないですか」 「……なんかえっちだね」 「いやそれが目的なんですけども」  先輩はきょとんとした顔をして突っ立っている。間抜けな顔もかわいい。 「ま、まだ心の準備が……」 「昔はよく一緒に入ってたじゃないですか」 「だってあの頃は、その……詩織がわたしにそんな性的な好意を抱いてるなんて知らなかったし……」 「顔が赤いですよ、先輩」 「う〜」  そっと先輩のおでこにキスをした。いじらしくてかわいい先輩。でも確かにあのとき、先輩は歩道橋から飛び降りようとしていた。先輩が高校を卒業した日、私が先輩に想いを伝えた日から、先輩は連絡をくれなくなった。先輩は大学進学で地元を離れてしまったし、何より先輩が先輩の答えを私にくれなかったことに、私はジリジリと心が焼き尽くされるような、燻るような気分になってしまった。私たちは親同士の仲が良かったから、明日香先輩がどこの大学に入ったのかは聞いていたし、私たちが仲良しなのも親には知られていた。だから、もう何年も連絡を取ってないと言ったら驚かれてしまった。
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