涙に濡れたキスの味

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「ねえ、詩織。どうしてわたしがここにいるってわかったの?」  私たちは湯船で体を温めていた。お互いの肌が密着するように、同じ方向を向いて体を重ねて浸かっている。 「わかった、というのは少し違います。教えてもらったんです」 「ママか〜……」  先輩のお母様から、明日香先輩が会社を辞めたことを聞いて、私はすぐに住所を聞き出し、会う決心をした。 「おばさん、心配してましたよ。最近会社辞めて元気なさそうだって」 「そこまで知ってるのか〜……でも一番最悪なとこ見られちゃったね」 「止められて良かったです」 「あはは」 「笑い事じゃない。実際私があそこを通ったのたまたまなんですから」  先輩の頭にチョップを入れる。いてて、と呟くあたり、あざとい。 「……実は会社辞めてちょっと元気なんだよね」 「嘘言わないでください」 「ほんとだよ? だってこうなってるのは会社のせいだし」 「……」 「ごめん、半分は嘘。会社辞めて男にもフラれたからプラマイゼロ」 「……それで死にたくなったんですか?」
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