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「うーん、そうだねえ……まあ会社でもうまく馴染めなかったし、大学の時から付き合ってた彼にはフラれたしでなんか参っちゃって」
先輩は目を伏せた。多分、いろんな理由があるんだろう。小さなことが重なって、いつの間にか気分が暗くなって、自分の生きる意味が見出せなくなって。そんな時に、愛していた人から別れを告げられる。考えてみると残酷な気がした。先輩は何も悪くないのに。
「人ってさ、死を考えた時、毎日死にたい、死にたいって感情が湧いてきて、でもその時、『あ、自分まだ生きてるな』って生を感じられるの。だけどそれが救いかって言われると全然そうじゃなくて。挫折して、もがいてみるけど、また挫折して。それを繰り返していく内に生きることに挫折しそうになる。今日こそは死のうって手をかけるけど、結局怖くなって死ねないんだ……」
先輩は震える声でこう続けた。
「死ぬことにさえ挫折した人間はどこに行くんだろうね」
「明日香先輩……」
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