妄想彼女

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「瑠夏ぁ、おはよぉ」 「はよ、穂波」  駐輪場で声を掛けられ、いつも通り応じたが、 「さっきぃ、多賀君がぁ、昇降口にぃ、歩いてったよぉ」 「マジでっ! ごめん、私、走るわ!」 「がんばぁ」 「ありがとっ」 穂波がニコニコ見送ってくれるのを目の端に捉えて笑顔で応えながら、しかし気持ちは多賀君に向かう。  4月から同じ教室にいたはずの多賀君を私が認識したのは、勿体無いことに最近だ。  その時、多賀君は、数人の男子が集まったその真ん中で、八極拳について熱く語っていた。中国拳法の一種らしい。  勿論、私には格闘技への興味なんて欠片もなく、スマホを弄りながら何となく聞き流していた。
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