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多賀君は、肘は真っ直ぐだとか、足を地面に下ろした時の力が凄いとか、腰の動きが肝だとか、とにかく夢中だった。
カラカラと響く笑い声もただ一心に楽しげで、そのとてつもなく熱心な語りに、私の視線はいつの間にか釘付けられていた。
凄いと思うと同時に、悶えるほど可愛いかった。
以降、私は、多賀君を追い掛けて過ごしている。
声は掛けられない。掛ける言葉が見つからない上、タイミングも思い切りもなかった。ずっと見られているなんて気持ち悪いかなと心配で、視線すらなかなか向けられない。ただ密かに後を追い、偶然を装ってすれ違う、そして同じ空気を吸う、そんな毎日を過ごしていた。
今日も、教室に向かっている様子の多賀君を発見して即座に物陰に隠れる。
そこで、思い付いた。
「5分だけ、私を見えなくして」
『ご依頼、承りましたぁ!』
これは、かつてないほどの有効利用ではなかろうか。興奮で手が少し震える。
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