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こっちは満員だよ。上に行きな?
冬をなだめた雨垂れが、
ポツリポツリと役目を終えれば河童の植えた ジャガイモ達が、
「わーいわーい」と天を突く。
突いて出たのは良いけれど、
なぜかお外は真っ暗で、
夜空に煌めく九蓮宝燈 下がれぬ星座が大渋滞だ。
もう卯の刻へと差し掛かるのに、
夜明けはどうにも留守のよう。
鵺の夜泣きが姦しい。
そんな夜空の真ん中で、
怒髪が天を 衝きそうなほど、
気炎を上げて 車輪を回し、
猛進するのは朧の車。
まだ雪解けの 終えきらぬ、
深い谷間に駆け込むと、
鼻提灯を膨らましている大太法師に吠え掛かる。
「べらぼうめ!」
吃驚仰天!
パンツ一丁飛び起きた、
大太法師が虹を架け、
駆け上がった天辺で、
背負った朝日を投げ上げる。
目を回した太陽が、
地上をあまねく照らす頃には羞恥を覚えた大太法師が、
夜の帳を体に巻き付け、
雲の合間にその身を隠した。
ようやく今日が始まるぞ。
一列を成した山彦達が、
トランペットを吹き鳴らし、
世の暁を 喜んだ。
有象無象が国から集まり屋台を広げる三丁目。
闇市なんてな名前だけ。
目抜き大路は活気に溢れ、
ギンギンに滾る商人達の、
呼び声高らか通りゃんせ。
しかしこれだけわらわら集い、
行き交うたびに 擦れてちゃ、
至る所で小火が出る。
鯰の訛りを聞き取れず、
「イチャモンかぁ!?」と、
顔を突き出す豆腐小僧の踏み出した足が勢い余り、
小豆洗いのザルを踏む。
小豆洗いがたすきを掛ければ さあ始まった豆合戦。
小豆と大豆の因縁に、
今日こそ雌雄が決するか。
道の真ん中お椀武士。
五寸の刀を振りかざし、
名乗りを上げたる一寸法師を指さし笑った野箆坊。
そんな息子の頭をペシペシ戒めるのは、
見越し入道。
彼に寄り添う美人妻、
スタイル自慢は八尺様だ。
誰もが見上げるおしどり夫婦。
短気な損気で得物を抜いた、
骨太男はガシャ髑髏。
安い喧嘩を買い取ったのは、
四角四面の無口な塗り壁 まばゆいばかりの白刃にさえ、
動じること無く行く手を塞いだ。
「舐めるんじゃねー」と吠え掛かり、
鋭い一閃 銀の太刀。
唐竹割りにて一刀両断、
返す刀で十字に斬った。
しかし相手は壁の体だ、
斬れば斬るほど四角が増える。
いつの間にやら四方を囲まれ、
不利を悟ったガシャ髑髏、
空へと高く 跳ね飛んだ。
弧をかき跳ねた 先の先、
猛進婆に蹴り飛ばされて、
頭蓋の骨だけすっ飛べば、
狸親父の腹を打つ ポン!
八岐大蛇の治める地獄は、
住めば都の満員御礼!
人間とか言うちっぽけなモノが、
落ちる隙間は無いんだよ。
*参加してくれた妖怪達(敬称略)
カッパ、鵺(ぬえ)、朧車(おぼろぐるま)、ダイダラボッチ、ヤマビコ、鯰(大鯰)、豆腐小僧、小豆洗い、一寸法師、のっぺらぼう、見越し入道、八尺様、ガシャドクロ、ぬりかべ、ダッシュババア、狸親父、ヤマタノオロチ(友情出演) 以上
なお、九蓮宝燈はマージャンの役の名前です。
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