碧につながる

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 あの子に会ったのは、私が大学に入って最初の夏でした。  春学期が終わってすぐに、この町に来たんです。どうしてここを選んだのか、ですか……。実は、当時は自分でも本当の理由が分かっていませんでした。  受験勉強を乗り越えて、なんとか第一志望の大学に入ることができました。学部ですか? 社会学部でした。あんまりはっきり「この分野の研究をしたい」というのがなくて……情けない話ですけど、この大学の社会学部ならいろんなことを幅広く学べそうだったから、という理由で選んだんです。でも両親は応援してくれて……。受かった時は本当に嬉しかったし、大学ってどんな感じなんだろうってわくわくしていました。  でもいざ大学に入ってみたら、なんだか思っていたのと違ったというか……同級生はサークル活動やバイト、ゲームやイベントの話ばかりで、授業中は寝ていたり、スマホを弄っていたり。酷いと漫画の回し読みしながらずっと喋っていて、先生の声が聞こえないくらいで。……すみません、突然愚痴を言って。要は、大学の雰囲気に馴染めなかったんです。  春学期の……ゴールデンウィークくらいから悩み始めました。どうして大学がこんなに辛いんだろう。皆は毎日楽しそうに過ごしてるのに……こんなはずじゃなかった。なんで私、ここにいるんだろう。そんなことまで考えだしちゃって。  でも、いくら考えても苦しくなるだけで、答えは見つかりませんでした。ただ、授業も友達とのやりとりも、どんどんストレスになっていくだけの日々が続きました。  やっと春学期が終わったとき、どこか遠くに行こうと決心したんです。ひとりになりたかった。大学のことも友達のことも一旦忘れたかった。幸い貯めていたバイト代があったので、両親にだけ「旅行に行ってくる」と言ってから、電車に乗りました。  行動力……? そんな大したものじゃないです。私、どうも衝動的なところがあるみたいで……。  それで、適当に乗った電車の窓から外を見ていました。しばらくぼんやりしていたら、大きな川の上を通ったんです。その時ふと「海が見たいな」って思って。この川よりも更に広くて深い海が見られる、潮風の吹く町。そういうところに行ってみたくなった。  知り合いがいなくて、私の予算で行ける海の町……って考えた結果、この町が頭に浮かんだんです。
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