碧につながる

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 電車を乗り継いでこの町に着いたのは、ちょうど今くらいの時間でした。大きな入道雲が海の方にあったのを覚えています。  泊まるところも決めずに来てしまったから、まずは宿探しから始めないといけませんでした。駅前の通りに、三階建てのホテルがありますよね? ああ、そう、そこです。ぱっと目についたので入ってみたら、空きがあったのでお願いしました。すごく親切にしてくださって……。今回もあそこに泊まることにしているんです。  一番の問題は解決したので、荷物を置いてぶらぶら歩いてみることにしました。商店街のお店をのぞいてみたり、細い通りに入ってみたり……。全然知らない道をひとりで歩くって楽しいんだなあ、ってあの時気づきました。私の街とは空気が全然違って、ざわざわしていた気持ちがちょっと落ち着いた気がしました。結構一人旅向きな性質なんですかね。  しばらくそうしてたんですが、やっぱり海に行きたくなって。二、三駅前の辺りって、海のすぐ近くを線路が走ってますよね。ちょっと高いところから見下ろした海面がきらきらしていて印象的で、もっとよく見てみたくなったんです。  海沿いの道に着いた頃にはもう夕暮れ時になっていました。私の他は誰もいなくて、ただ波の音だけが響いていて……あそこにいると、海を独り占めできたような気分になれますね。  そのまま道なりに町のはずれのほうへ向かってのんびり歩いているうちに、小さな岬が見えてきました。夕陽で陰になった、ごつごつした岩が剥き出しの、高さ十メートルはありそうな切り立った崖。なんとなく物寂しい感じのする風景でした。  その崖っぷちに、女の子が一人立っていたんです。
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