<1> 同居人マキちゃん

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「『今の仕事』って? マキちゃん、ハルちゃんのお店で働いてるんだよね?」 「え?・・・ええ、そうよ。でも昼間の仕事もあるの、バイトみたいな。ほら、ハルの店のお給料だけじゃキツいから」 「そうなんだ」 此方を見ないままで喋るマキちゃんを、何処か怪しいなと思ったけれど。それ以上尋ねることはなんとなく憚られた。 お酒の勢いで同居することになったマキちゃんの素性を、私はよく知らない。でも。この家にさほど金目の物は置いて無いし、私は三十路のバツイチ女だし、仕事以外失う物はない。 あの店のオーナーであるハルちゃんが身元保証人だし、なによりマキちゃんを疑うくらいなら、私のジュエリーくらい失っても構わない。 ―――『栞ちゃん、なんて良い子なの! きっと神様が、あんたにはこんな旦那ふさわしくないからって、追い払ってくださったんだわ』 ―――『栞ちゃんは被害者よ。元旦那は地獄に落ちればいいし、その雪奈って子の心配なんかしてやること無いのよっ。・・・・んもうっ、もっと自分のこと考えなさいよ!!』 お酒の所為で気が弱くなった私が身の上話をすると、私のためにぷんぷん怒って、それから大きな手で私の頭を何度も撫でてくれた。 涙ぐむ私に言い聞かせるように、『アンタは何も悪くないのよ』と繰り返して。 「マキちゃん、買い物行く? 車出すよ?」 「良いの? 助かるわぁ」 今晩もお店出勤のマキちゃんだけど、夕方まで時間があるから少し離れたショッピングモールまで日用品の買い出しに。夕べ着てきたものはお店用のワンピースだったから、とりあえず兄貴の服を着せてみた。 酔っ払った私を支えて歩くため、荷物は持ってこられなかったのだ。昼間の光の中メンズの服に着替えたマキちゃんはイケメンで逆に私には違和感ありありだけど 「可愛い! スリッパこれにしよーっと」 ウサギ柄のピンクのスリッパを胸に抱く姿は、やはり乙女。  
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