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「小さな会社ですけど」
私はバッグから名刺入れを出し一枚渡した。
「あら、知ってるわ。御社、北欧の輸入品扱ってらっしゃるのよね?」
「ええ、兄が社長なんですけど、ほとんどあっちに住んでるので」
「イケメンなのよぉ、妻子持ちだけど」
マキちゃんの言葉にタカシさんは一瞬固まったけれど、
「あら、妻子持ちなの、そりゃ残念ねぇ~」
と笑った。
それからマキちゃんはタカシさんに
『ちょっと奥に仕舞ったのも見てみる?』と連れて行かれ、
上品な光沢のある白とピンクのシャツブラウス2枚を手にして出てきた。
ディスカウント品のハンガーを物色し、綺麗なレンガ色のチノパンにカーキのワイドパンツも購入。
「まだ暑いけど、夏物はろくに残ってないのよねぇ。秋冬物が要るならまたゆっくり買いに来てちょうだい? レディースもあるから、栞ちゃんも是非」
銀の文字で店名であろうCROCUSというロゴの描かれた濃紺のショッパーズを渡し、マキちゃんと私を扉の外まで見送ってくれて『ありがとうございました~』と手を振るタカシさん。
私達と入れ違いに新しいお客さんが来て『あ~ら~、いらっしゃぁい』と扉を押さえて出迎えていた。
若い女性の顧客もついているらしい。
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