<1> 同居人マキちゃん

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『・・・・栞?』 「どうしたのよ。また揉めてるの?」 『・・・・雪奈がまた泣いてるんだよ。慰めたら返って酷くなって、号泣。独りにしてっつって、部屋に籠もってる』 私はスマホを一旦遠ざけて大きく溜息を吐き、 「妊婦さんだから、そう言う時期なんじゃない?」 『もう安定期だぞ。腹も出てきて・・・、マタニティ服着て昔の友達に会ったら、その子が彼氏とのラブラブ自慢してきたとかで・・・・・自分が妊娠して恋愛抜きで結婚したのが辛いんだと』 「―――っ、それ、私に言う? アンタの所為でしょ!?」 『そ、それは分かってる。俺が悪いんだけど、・・・・結局、栞と別れてまで責任取ったのに、いつまでもこうやって泣かれてたら』 「あのねぇ。」 今度はスマホを遠ざけること無く思い切り溜息を吐いて、息を吸い込んで一気に喋りだす。 「しんどいのは分かるけど、雪奈ちゃんのお腹の子は、智紀の子でしょ? なら守らなきゃ。アンタ9つも上なんだし。あの子はまだ心が幼いの。前々から私、言ってなかった?」 純粋だけれど、心の不安定な女の子で。自分の言動に責任を取るという大切さを、まだ学びきっていない、少し幼稚な21歳。 「私に申し訳ないと思うんなら、責任もって雪奈ちゃんを守ってあげて。あの子の不安を取り除いてあげられるのは智紀しかいないんだよ?」  
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