<1> 同居人マキちゃん

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もうちょっと、女心を理解しろ。 別れた妻に略奪新妻の愚痴を言ってくるっておかしくないか? しかもまたマンションの廊下で。 智紀だけかしらん、そんな馬鹿な男。 男にもいろいろある。 ウチの社内一硬派な武内さんや、遊び人から一転奥さん命の兄貴みたいなの。 それにハルちゃんやマキちゃんみたいな・・・・。 「マキちゃん・・・、早く帰ってこないかなぁ」 『先に寝てて』と言われたし、スペアキーも渡してあるけれど。私は明日も休みだし、マキちゃんとガールズトークでもしたいなぁ。 そう思いながら取りあえずお風呂に入り、忘れちゃいけないお肌の手入れ。 それからTVをつけ、軽く呑んでようとおつまみとアルコール度数低めの缶酎ハイを冷蔵庫から取り出した。 「私が泣かなかったなんて本気で思ってるのかしら、智紀のヤツ」 プシュ、とプルタブを開けるとグレープフルーツの香り。華やかだけれど、すこし苦みのあるコレが最近一番好きな味。 「私だって、甘えたいのよ」 一人きりの部屋でさえ、しらふで口に出すと恥ずかしくなって 私はナッツを口に放り込んだ。 『もう、お前達で結婚しろよ』 苦笑いで社長である兄がそう言った時、私と智紀は顔を見合わせたっけ。 『うーん、ナシ、じゃないよな。・・・・どう思う?』 その晩ふたり居酒屋で呑んで、成り行きで付き合いだした。 家族ぐるみの付き合いで物心ついてからの友人で、仕事仲間。大学は離れてたけどお互いの過去も大概知ってる。 ふたりとも仕事に慣れてからは恋愛からも遠ざかっていて、気づけば私は27歳になっていた。  
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